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■    『在庫ゼロならいいじゃないか』 物流費を払って、VMI
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▼カンバン方式は下請け泣かせ?

自動車ヘッドライトのレンズを輸送中に、日本坂トンネル火災に遭遇してしまった
事故がありました。ずいぶん昔の事でしたが、「ラインが止まる!!!」という強
迫観念から、ドライバーの安全確認と同時に迂回路での到着時間を懸命に試算して
いたことがあります。

当時のカンバン方式は「輸送途上の製品在庫を引き当てて」生産が進んでいました。
工場への到着時間が遅れると、本当に製造ラインが止まり、ペナルティーがあった
ようです。それをして、JITカンバンは「在庫を協力会社に負担させてる」と悪
口を書かれたこともあります。実際には長期安定取引と熱い絆が守られていて、は
た目はともかく、当事者の協力関係は強固でした。

在庫の負担を回避するいいしくみ、(在庫の陳腐化リスクはお互いで負担する契約)
となっています。同じような仕掛けのVMI(ベンダーマネジメントインベントリ)
が再び脚光を浴びています。

●それは、コペルニクス的大転換につながるから

小売りの大手がPOS情報をベンダー(卸、メーカー)に提供して、小売り側の発
注業務を排除しながら、在庫リスクと陳腐化リスクをカバーするのがVMIの本質
です。ベンダーにしてみると、専用倉庫を準備したり、出荷速度を上げるために流
通加工を予測でこなしていたり、スタート時点では不平等取引だよなぁ という声
がしきりでした。

一方、VMIしてもらう側では良いことずくめです。
○POS情報を開示することで、発注業務が無用
○同時に販売予測をベンダー側が勝手に?してくれる
○仕入れは受け入れ検収時点で、消化仕入れのように支払いが遅くできる
○何より、在庫のリスクを回避できる
○なので、少しはベンダーさんに業務委託費を払ってもいいかなぁ

という意志決定ができます。

「在庫資産を軽減しながら、パートナーに物流費を支払う」

物流コストをどうやって下げようか、圧縮しようかと悩むときにこれですから、び
っくりします。でも、キャッシュフロー効果は莫大になるはずです。

▼VMI側、受ける側 どっちも得です

日本の流通構造が悪者で、だから日米構造協議がもめたのは流通マージンが高すぎ
る(ように写ったからでしょう)ところに遠因があって、だから問屋無用論の再燃
がありました。

セルイン(卸が小売りに売り込むこと)とセルスルー(小売りからお客に売ること)
の同期と正確な情報が共有化されたらいいね というのが、SCMの本質ですが、
それができないから、立場を守るために卸は10%、小売りは30%のマージンが
必要で、それを構造問題だ とされたのがかつての話でした。

小売りと卸、メーカーが梅雨時の雨傘を、VMI方式にしたらどうか。

売り場の当日売上をもとに、明日送り込む約束と手段が確保できるなら、雨傘の物流
コストと在庫リスクはどうでしょうか。お互いにお得なのでは。
売り手側の生産、仕入れリスクもかなり低減できるし、買い手の在庫負担と物流費の
少し余分な支払いをしても損得は合うようですね。

●合成の誤謬 というのは、いつでも起こるものです

そもそもの意味は塩ジイが間違えたように、実は簡単なお話ですね。それぞれが良か
れと思って全員が一斉に走り出すと、混乱が起きる というような、合理性の追求が
自家中毒や社会の混乱を引き起こす ということで、物流効率化を進めれば進めるほ
どネットワークが混乱していくようなものです。競争するより、共同したほうがいい

物流コストを下げようと努力することも大切ですが、限界点というものがあって、た
とえば作業コストや運賃は、働く人の生活給与でもありますから、コスト削減は突き
詰めるとその人いらない、ロボットか外国人に押しつけよう ということになって、
欧州の一部の国のように国家維持まで危うくなってしまうことになります。

無理ムダ重複の物流コストは恨むべきものですが、コスト抑制で採算向上を目指すと
同じように、VMIのようなリスクをお互いに分担してコスト削減以上のキャッシュ
効果を生み出すこともできると知ることが大切ですね。


▼デフレ対策は生産、供給、在庫過剰だったはずです

作りすぎ、無理な販売、生産拠点の空洞化がますます大量生産に走っているなど、合
成の誤謬がまたまた起きています。
消費財300兆円のモノの製造原価に占める人件費率は、過去下がり続けていて、モ
ノ作りのうまさが日本のお家芸だったのに、人件費単価が安くて幸せだからとアジア
に進出して、やっぱり作りすぎているのはなぜでしょうか。

挙げ句の果てに慣れない国際物流で、時間と手間が掛かりすぎて商機を逃しているマ
ネージャーもたくさん苦労しているようですから、効率の追求も落とし穴があるよう
です。

●不景気を凌ぐのに協調、連帯、共有化、同士の意識を

なぜ在庫がそれほど必要ですか、なぜ輸送コストが問題ですか、なぜ遅いといけない
のですか、・・・・。物流はもっともっと、製造と販売の苦労を知るべきで、まだま
だ知恵を出せる場面が多いはずです。数えて運ぶ機能としての物流から、製造、販売
静脈、環境対策、業界市況の構造まで、広く知るべきです。知識と知恵とアイデアは
物流費がかかりません、容量は無限大です。情報こそ、貯めて貯めて、活かせること
があるものです。荷主に代わって考える、物流の代わりに知恵を出す、そうして同じ
釜の飯を食べている一体感があれば、コンペだ、コストだ、品質だ、差別化だ、お得
だ、損だ、という悩みはなくなりませんか。


■筆者著作紹介
 「物流のしくみ」この1冊で分かる・学べる・見えてくる / 花房陵 著
 物流の基本的なしくみから最前線までを、「キーワード」を軸にやさしく解説。
                             (すばる舎発行)
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