◆------------------------- TOPICS 1 -----------------------------◆
■■■評論■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■ 『新版物流ABC公開中』 物流改善の48手から
■■■評論■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
▲物流コスト算定マニュアルが改訂されてます
10年前に公開されたコスト算定マニュアルが去年、ABC準拠に変わり、
今年さらに改訂されました。しかも、倉庫編、運送編の二部力作です。
中小企業庁、物流商流支援
http://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/040524butu_abc_zouho.htm
○そもそも、物流コストとは
今時、支払い経費だけを物流費と考えている方は少ないでしょうが、世に物流
業界の市場規模(運送・倉庫業などの売上)は25兆円(運輸12兆、倉庫4
兆など)といわれるものの、製造や流通の自社物流に係る経費もまた25兆で
結果として、GNP500兆の10%を占めています。
内訳は、物流管理や荷役作業の人件費、倉庫や保管の設備費、配送の運賃、情
報処理費や包装の資材費などで、これらを機能別コストと呼んでいます。
物流コストが問題視されている原因は、日本企業の収益力が売上高5%程度の
状態だからであって、物流コストを半減できれば利益が倍増する構造がありま
す。
支払い経費(保管料や運賃)は明確だけれども、自家物流の仕入れや発注、受
注および営業事務などの内部物流費の把握が難しい。でも、合わせて見ないと
本当の物流コストはつかめません。
そこで、製造や販売の直接経費ではない、間接経費の理論としてかつてからあ
ったABCの理論(活動基準原価計算)が脚光を浴びたわけです。
1980年、アメリカのロバート&キャプラン達が間接費管理の理論として、
ABCの理論を公開しましたが、日本では90年代に「リストラツール」とし
て、営業の効率や間接部門の人件費抑制に使われたグレイな理論です。
○物流ABC理論の前提条件は
生まれがグレイでしたが、日本では専修大学の櫻井教授が理論を展開して情報
産業やサービス業(銀行や旅行社)などに応用したので、物流業も導入を行い
SAPなどの汎用パッケージソフトウエアでも機能として装備しています。
製造業であれば原価管理の部門があります。人工計算や歩留まりの概念が社内
にありますから、物流活動の原価を考える習慣があります。
小売業なら、店頭の品揃えに商品ミックス・マーチャンダイジングという利益
極大化の組合せを考える習慣があります。
困るのは物流現場には、このような原価把握の習慣が少なく、裏付けが取りに
くいことが問題点としてあります。そもそも、一日の処理物量が計算できない
という現場もたくさんあります。
物量とは、ケース数、重量、時間という測定要素ですが、情報システムでは特
に販売情報ばかりで、行数やアイテム数、出荷金額はあっても重量、容積、ケ
ース数などの物量情報がない方が多い。
それに、能力主義賃金体系ではありませんが、時間当たりの生産性を上げるた
めの業務目標や業績管理が無いところでは、また時間の把握と物量の関係を掴
もうという動機がありません。
つまり、原価部門か経理部門で原価の把握ができているか、人事や業績管理の
目標に生産性という指標があるか、というのが物流ABC理論を導入する歳の
前提条件でもあり、環境となります。しかも、物流ABCの目的は、コスト把
握ではなく、商品・サービスミックス、ひいては得意先の格付けや選別につな
げなくてはならないという合目的的なモノでなければなりません。
▲いい考えなんだけど、導入には壁が高い
毎月の定例会議に参加する人々の平均人件費を算出し、会議時間を掛けて、見
なしコストを把握して、会議の結論がコストに見合うモノかと判断するなら、
会議なんて止めちゃえ という話もあるでしょう。
営業マンを合宿セミナーに送り込むコストと業績を比較することができるかど
うかという見方が成り立たないように、物流の原価を見つけたとしても背景が
変わってしまうと原価も変わる。
忙しければ生産性がある程度上がるし、暇なのは物流サイドの理由ではなく生
産や営業の都合であることも多いからです。
原価とは、時間当たりのコストです。荷役作業なら会社としての時間当たりの
労務コスト、輸送ならトラック1台1時間当たりの輸送三費とドライバー人件
費、保管なら賃料と設備の均等(定額)償却額から算出する原価です。・・
原価要素の多さに辟易するでしょうし、帳簿を調べてもトラックの号車ごとの
燃料費や修繕費までは把握できない、・・・・・。自社倉庫や工場なら、坪当
たりの原価も計算できない。と、データがないことで止まる。
しかも、活動原価ですから作業者や配送の「いつ、だれが、何を、どれほど」
という詳細な日報作成と記録が必要になるわけです。
このあたりの、前提を承知しないで物流ABCのマニュアルやテキストを読ん
でも、最初の数ページでギブアップすることがある。
○役立つこともある
センターフィーを要求された、物流見積を根拠を明確にしたい、手空き時間を
正確に調べたい、・・・・など、使える要素は多いです。なにより、商品ミッ
クスや顧客の選別をまだしたことがないなら、絶大な効果が見込めます。
たとえば、出荷伝票1枚当たりの物流原価指標というのを定めると、販売は少
量多頻度を控えようと動きますし、得意先別の営業利益貢献度の算出にも役立
ちます。
何より測定の手間はあるけれども、物量データの計測ができれば、在庫の量を
金額ではなく、日数換算で評価し直すこともできる。
ITを利用することで、物流現場に科学性が生まれるし、データで語ろうとい
う気概も生まれる。仕事の成果をグラフに示すことも簡単になるし、予測や計
画も具体的な数値で語ることができるようになる。
▲コストダウンは、計測では解決しない
物流ABCのマニュアルは、コストの改善をできると解説していますが、そこ
で発見できる事実はたいしたことがありません。手待ち、手空き、滞留があっ
てもそれは物流では解決できないからです。
もし、時間当たりの処理能力が低いことを発見できたとしても、現場ではそん
なの前から承知していたはずで、だからツールが欲しい、システムが欲しいと
話していたはずです。
コストダウンのための現状調査は、計測より観察です。なぜ、なぜを繰り返し
ても実は真の原因を見つけることはできない。あったとしても、来月には原因
が変わるし、動く。コスト要因は複雑な組合せで影響するモノです。
現場でできる「物流改善」本の48ページに、ベンチマーキング表を挙げてい
ます。コストや精度、およそ物流現場の改善すべき課題の11は、この表で診
断できると書いています。
物流ABCのマニュアルの本当に優れた効果は、データで語る風土と科学で解
決しようという動機付けができることに尽きるでしょう。しかも、計測の結果
を社内の各部に共有化して、本当の全社最適に向けての物流改善を考えるスタ
ートになることです。
○物流は戦略なのだから
商品ミックス、顧客の選別こそ、バブルで膨らみデフレで苦戦した経営の原点
だと思います。売ってはいけない商品や得意先(営業利益が低いという意味で
すよ)を見つけ出し、在庫の偏在と過剰を物量で把握して生産調整を行うこと
が、供給過剰によった自社デフレ(安売り、無理売り)の対策でしょう。
戦略とは選択と集中ということです。どの商品と顧客層にターゲットを絞るの
か、物流効率を上げるとはどの範囲に絞り込むことなのか、という戦略性がこ
れからの物流です。調達先も販売先もグローバルに展開するだろう現在、コス
トを掛けてでも死守すべき市場はどこなのか、に思いをめぐらす余裕が欲しい
ですね。
利益のために物流コストをどうやって投入していくか、ということが戦略性で
生産性ばかりを重視した効率追求は二の次ではないでしょうか。
■筆者著作紹介
新版「物流のしくみ」この1冊で分かる・学べる・見えてくる / 花房陵 著
物流の基本的なしくみから最前線までを、「キーワード」を軸にやさしく解説。
http://esbooks.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31413257 (すばる舎)
第二弾著書、好評発売中! 「現場でできる物流改善」(日本実業出版)
http://product.esbooks.yahoo.co.jp/product/keyword/keyword?accd=31072269
第三弾完成! 『全社で進める30%超物流コストダウンマニュアル』
コンサルテクニック満載450ページ重量本。(アーバンプロデュース社)
http://www.urbanproduce.com/books/k/15.htm