物流不動産・変革の潮流(前編)




株式会社アバンセロジスティック
常務執行役員 河田 榮司
 
     
      
 このところ「物流不動産」という概念が、物流ビジネスを行う上に不可欠となってきました。倉庫、配送センター等今までの業務の中で当たり前のように利用してきた従来の物流施設に大きな変化が現れたからです。「物流不動産」という考え方の必要性と外資物流不動産の概要を前編に記述し、後編には「物流不動産」がどのように経営改善に寄与するのかを中心に筆を進めてみたいと思います。
 
物流センターの規模と所有者
 最近の物流センターはどれをみても大型になってきました。自走式で40フィート車が上っていける大型の施設です。それも物流加工型で、単なる保管ではなく色々な作業が出来るように設備が充実しています。空調、照明、防災、耐震設備、セキュリティ、通信、IT化、それにアメニティといわれる快適な設備、例えば男女別のきれいなトイレや休憩室なども完備し、通勤に便利な立地と立派な外観を持った物流センターです。
 
 もう一つの大きな変化はその物流施設の開発者であり所有者です。従来の倉庫業者や運輸業者、またはメーカーではありません。日本国内のみでなくアメリカやヨーロッパ、アジアから投資された資金を基にした外資や個人資金、企業年金をも活用して大型投資を行う不動産ファンドといわれる不動産金融のプロフェッショナルが参入してきたのです。
彼らが投資対象とする物流施設は従来型のものではありません。それが新しく開発されている、時代のニーズに対応した快適で高機能な設備を備えた大型の物流センターなのです。
物流不動産ビジネスの台頭
 この4〜5年で1兆円から2兆円といわれる物流不動産ファンド資金が物流業界に流入してきており、各地で大型の物流センターの開発が急激な勢いで進められています。
そのような中で、倉庫のスペック(仕様や機能)も変わってきました。新しいスペックを導入してテナントを誘致し、管理運営をする。それも荷役ではなく床貸しで収益を得ていくということが主流となっているのです。まさに物流不動産という概念が必要となってきた所以です。もはや物流不動産を本当の意味で経営戦略に取り込んでいく姿勢が不可欠となっているのです。

 坪貸しを基準とした不動産的な見方をするのが物流不動産で、今まで寄託ビジネスを中心としてきた倉庫事業から見れば、そのような床貸し業は経営の主流ではありませんでした。しかしその物流不動産ビジネスに莫大な資金と新たなビジネスプレーヤー(投資や運営を行う企業や人々)が参入するようになってからその事情が一変し始めています。
不動産業、金融業、商社等々の物流業ではない業種が、積極的に物流施設の開発や投資ビジネスを始め、その投資基準によって倉庫が評価され、売買されていくようになったのです。荷主(不動産業ではテナントになります)もそのような新しい施設に移動を始めました。
 このように従来型の物流施設の大家さんが倉庫事業者からファンド事業者に取って代わられようとしているのですから他人事ではありません。この時代の大きな変化を知り、経営の将来を考えなければならない事態なのです。いやむしろその変化を利用することも可能なのですから、そのようなビジネスモデルを身につけた方が得ということになるのでしょう。
   物流不動産ビジネスのポジション
 
 このように物流不動産という捉え方をしますと、資産の見方が根本的に変わります。
例えばアパート経営の大家さんをやっていたとします。それで何とかやってきたところに、突然すばらしいマンションが現れ、店子がそちらに移ってしまったようなものだと考えていただければどうでしょうか。アパートの大家さんは今まで通りに自分のアパートが最高だといくら言っても、新しいマンションの方が設備も外観も生活スタイルも優れていれば、少々高くても店子はそちらに移ってしまうのです。それに対抗するためには、新しいマンションを研究し、改善していかなければ収益を確保できないこととなるのです。そのためにも自らの資産を見直さなければなりませんね。新しい動きを無視することは出来ません。
このこととよく似た現象が今倉庫で起きているのです。今までの基準で倉庫を判断していては時代についていけなくなる恐れがあるのです。
 物流不動産としての資産見直しに取り組むことが、もはや不可欠となっているのです。
物流不動産業が担う物流センター
 このところ盛んにマスコミで取り上げられている大型の物流施設をご存知でしょうか。
そのほとんどが不動産ファンドといわれる投資資金で開発されています。代表的な物流不動産ファンド事業者は、アメリカのプロロジス社です。全世界で約1700棟の物流センターを保有し、総資産額が1兆3000億円を超すといわれています。取引企業(テナントとなります)が3500社という国際企業で、不動産ファンド(基金)という莫大な資金を集めて、物流施設専門に投資・運営する物流不動産事業者です。荷役業務は一切やりません。物流施設からの賃料収入と、保有する不動産売買取引だけが収益の源泉です。

 またアメリカ第2位の物流不動産ファンド企業であるAMB社が日本で設立したAMBブラックパイン社も盛んに取得投資を始めました。プロロジス社が1500億円、AMBブラックパイン社が1200億円、ラサールインベストメント社が2000億円、そして日本勢では三菱商事が4000億円というように次々と大型の投資が予定されているのです。

 プロロジス社は、東京・東海で大型のマルチテナント型物流センター、新木場のDHL配送センター、加須の日立物流センター、大阪南港の大型物流センター、愛知東海でのアスクル配送センター、その他成田、鶴見と日本各地で既に14棟の大型物流センターを開発・計画しています。また、AMB社は同じように東京湾岸エリアの大型物流センターや、成田エアカーゴセンターなど幾つかの開発を進めています。この他にもまだまだこれから開発が進められていきます。それらは大型というだけでなく、自走ランプウエイや免震装置など新しい機能を備えた最新施設で、従来の物流施設との明確な差別化を図っています。

薄れる業界の際

 従来の倉庫業者から見ればまるで黒船がきた時のような影響を与えている物流不動産業ですが、倉庫業者には大きなプライドがあります。読んで字のごとく「お蔵(倉)」を資産として培ってきた伝統と信頼に対するプライドは、不動産業とは相容れない文化を育んできました。しかし、確実に物流業界の実態が変わってきており、倉庫事業経営の大きな変革の時が迫ってきているのも事実として受け止めなければなりません。業界の再編や施設改善、テナント獲得に対する戦略を見直さなければならない時期がきたといえます。

筆者プロフィール

河田 榮司(かわた・えいじ)
 1975年〜2000年 野村不動産(1991年〜1997年野村證券所属海外勤務)横浜ビジネスパークウィーン新都心開発事業等各種の開発プロジェクトに従事。1998年〜住宅事業開発部長。幕張ベイタウン開発等大規模開発事業に従事。2003年(株)アイアムエンタープライズ設立 (株)アバンセロジスティック常務執行役員
 不動産証券化業務 不動産有効活用コンサルタント業務 SPC代表等を歴任