物流不動産・変革の潮流(後編)




株式会社アバンセロジスティック
常務執行役員 河田 榮司
 
     
      
 本稿前編では「物流不動産」という考え方の必要性と外資物流不動産の概要を記述しましたが、今回後編は「物流不動産」がどのように経営改善に寄与するのかを中心に筆を進めてみたいと思います。
不動産のありかたが変わる
 不動産ファンドによって物流施設への投資が始まったのはこの2〜3年のことですが、既に不動産ファンドによって様々な不動産が取得されているのです。
例えばNECの本社ビルや日立の本社ビル、JFEの本社ビル、新宿の野村ビルや住友ビルなどの超高層ビルといったものに代表されるような優良な大型ビルや、イトーヨーカドーなどの大型のショッピングセンター、東京での優良賃貸マンション等々、様々な収益不動産(賃料収入によって収益がある不動産)がファンドの所有となっているのです。たとえ本社ビルでも所有者はその企業ではありません。リースバックという方法で、一括借りをしているテナントに過ぎないのです。このように所有と利用の分離が急速に進んでいます。
 その不動産ファンドのうち幾つかは1000億円〜2000億円の不動産投資信託として法人化され証券市場に上場されています。誰でも一口50万円〜80万円ほどでその投資法人の株として購入できるのです。配当利回りも発売当初は年6%ほどでしたが、このところ株価が上って4%前後の利回りとなっています。建物からの賃料が配当の源泉ですので安定した株式投資として人気が出ています。そしてこのような不動産ファンド資金が物流投資にも向けられて始めているのです。広く世界中から集められる投資資金ですので、資金はいくらでもあるといっても過言ではありません。

証券市場に上場されている不動産投資信託


 それと連動して、物流施設の評価も厳しくなってきました。他人のお金を投資して運用するのですから当然です。言い換えますと不動産からの賃料収入がいかに安定し、高利回りであるかということが投資の大切な基準となりますので、建物やテナント、賃貸借契約条件(契約期間、賃料等)といった内容を専門家によって詳細に評価することが求められるのです。
すなわち物流不動産では、その立地や建物のクオリティ、安全設備、テナントとの契約内容、テナントの信用性といったものの評価が主なところとなり、それを客観的かつ中立的に評価されますので、従来の物流施設とは所有と管理運営の考え方が基本的に違うのです。
 そのことが物流不動産という概念が必要な所以であり、その体系的な基準作りと人材育成が求められるところとなっているのです。ガラス張りの不動産施設運営です。
このような投資システムの変化によって、物流不動産ファンドが新たな物流施設の基準を体系化し始めており、将来の物流施設開発のあり方を担っていくことと思われます。
経営改善と物流不動産
 不動産ファンドの出現などによって大きな変革の時を迎えている物流業界ですが、経営改善にそのような変化を利用することも可能となっています。
 先ず利用と保有の分離が進展することによる役割分担です。すなわち不動産ファンドを活用した経営戦略の構築です。不動産ファンドと共同して大型の物流施設を開発し、それを一括して借り受け、そこに取引のある荷主を誘致して、床貸しをサブリースという形で行い、賃料差益を得るのです。さらに荷主に荷役サービスも行って収益を得るという方法です。
 このようなビジネスを既に始めている企業も幾つかあり、業績を向上させています。
 ここではファンドに対して、一種のノンアセットの3PL事業者ということになるのです。自らの投資はありません。但し投資家である不動産ファンドに賃料を保証しなければなりません。そこが経営リスクですが、取引のある荷主の増床ニーズや自社保有施設の建て替え時などにはうまく使える手法となるのではないでしょうか。
 世界の物流不動産ファンドでは、その施設の貸し先は約半数がこのような3PLといわれています。物流ファンド側もそのような信用ある3PLを求めているのです。もちろん直接の荷主であれば良いのですが、大型施設になれば多数のテナント(荷主)管理が難しく、一括して借り受けてくれる方が投資として安定するというわけです。
 また、私募の形で不動産ファンドを設立することも可能です。匿名組合出資や不動産の信託制度を活用して、節税を行いながら優良な物流施設を保有、管理することも出来るのです。
従来のように一社で倉庫を保有して利用を続けるだけの選択肢ではなく、多様な投資方法や活用方法が可能となってきており、大いに経営戦略に生かしていきたいものです。
 それから不動産の証券化を活用した経営改善策も考えられます。  

不動産証券化の仕組み
(信託受益権を利用した一般的な不動産流動化のシステムチャート)
 
 既存の自社保有物流センターを証券化することにより、その実質的な利用権と賃料収入、荷主からの荷役収入を現状通りに確保した上で、売却収入(売却評価額の60〜70%程度が一般的です)を得ることも出来るのです。そんなことができるのだろうかとお思いでしょうが、それが出来る手法があるのです。もちろん色々な条件がつきますが、これは不動産の流動化に関する法律改正がなされたから出来るようになったのです。
 この不動産の証券化に関しましては、また稿を改めてご説明していければと思いますが、時代の変化をうまく活用して、不動産、資金などを効率的に循環させ、新しい経営に取り組んでいただければと願う次第です。

箱物倉庫から高機能物流センターへ

 これからの物流施設が大きく変わっていく背景の一つに、物流システムの変化も大きなファクターです。無線ICタグ(RFID)の導入やサプライチェーンマネジメント(SCM)の進展によって、ますます機械化に対応した高機能物流センターが求められていくことは間違いないところとなるでしょう。
 それに伴って高機能の物流加工型センターが進化していき、物流施設の差別化が一層はっきりしていきます。その意味で物流ファンドはその尖兵です。物流ファンドの施設に保管型はほとんどありません。従来の倉庫事業者は、そのようなファンドが開発する大型・高機能の物流加工型物流施設との熾烈な競争に打ち勝たなければなりません。もちろん勝った、負けたということではなく、むしろそれを逆手にとって活用するという方法でもかまわないのです。経営に勝つということが本来の目的なのですから。
 いずれにしてもグローバルスタンダード(世界基準)という見地から開発される、優良な物流施設を使って高収益を目指していかなければならないのです。
 心配はいりません。やり方によってはそれが十分出来るのですから、そのノウハウを是非身につけていただければと思います。まだまだ大きく発展していくであろうと思われる物流産業。この寄稿文で、その大きな変化の潮流を感じていただければ幸いでございます。


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筆者プロフィール

河田 榮司(かわた・えいじ)
 1975年〜2000年 野村不動産(1991年〜1997年野村證券所属海外勤務)横浜ビジネスパークウィーン新都心開発事業等各種の開発プロジェクトに従事。1998年〜住宅事業開発部長。幕張ベイタウン開発等大規模開発事業に従事。2003年(株)アイアムエンタープライズ設立 (株)アバンセロジスティック常務執行役員
 不動産証券化業務 不動産有効活用コンサルタント業務 SPC代表等を歴任